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美内すずえ
プロフィール

大阪生まれ。高校二年の時「山の月と子だぬきと」でデビュー。昭和51年より「花とゆめ」に掲載されている「ガラスの仮面」はアニメ化・舞台化されるなど幅広い人気を集めている。ほかに「黒百合の系図」「ダイナマイト・ミルク・パイ」「聖アリス帝国」など多数。読者をひきつけて離さない巧みなストーリーを展開する作風で熱狂的に支持されている。

 

 

対談! 美内すずえ × 副島新五

演劇漫画の金字塔である名作「ガラスの仮面」の作者と、赤鬼作品のメインキャストとして活躍する看板俳優である副島新五が舞台の魅力を語る。

-美内さんは以前赤鬼の『Silent Knight』をご覧になってますが、役者に対して感じるのはどんなことですか?
美内-舞台ではないのですが私も講演をしている時に、来ている方がなにを感じているか、何を思っているかが敏感に伝わってくるんです。なんか、「心が返ってくる」っていうか「心のキャッチボール」をしているなって。それって役者さんも敏感にわかるんでしょうね。

副島-劇場って、舞台も客席も含めてひとつの空間なので、「今お客さんが泣こうとしている」という空気を肌で感じます。「うけてない」って時もよくわかりますしね。(笑)
美内-その落ち込んだ役者の気持ちが、また観る側に伝わってきたりしてね。(笑)そう考えると、舞台は役者さんが演じて成り立つんだけれど、観客が育てるっていうのもありますね。
副島-そうですね。いいむろなおきさんってマルセル・マルソーに師事したマイムの方にワークショップをして頂いてるんですが、その方も、お客さんをまずリラックスさせて、じわじわと盛り上げていく作りをしないといい作品はできないって言ってらっしゃいましたね。
美内-わかります。とけこめない作品ってありますもの。舞台と客席の間に見えないカーテンがあるみたいな。
副島-はいっていけないぞーって。(笑)
美内-逆に自然に舞台の中に入っていける時って、観客もうれしい。室町時代に世阿弥がね、役者の心構えとして「出が大事」って書いていて、面白いなって思ったんです。
副島-「出」ですか。
美内-ええ、ざわついていたお客さんが開演時間になって次第に落ち着いてきてもまだ出てはいけない。観客の「まだかまだか」っていう気持ちが高まった時、つまり「観たい」って意識がピークにきた時にポーンと出ろって書いてあるんです。これって今でも通じてる、すごいって思って。
副島-お客さんが求めているものを、その瞬間にできたらお客さんはうれしい。
美内-腹ペコの時の食事と一緒。やっぱり人間の心理を読むのがうまい人が成功してるなって思いますね。絶対に感動する一言でも役者の「間(ま)」が大事。なにげない一言でも「間」があたるとすごく感動できたりする。
副島-僕にもそんな経験がありますね。僕が初めて赤鬼の本公演に出たのは『Silent Knight』の初演なんですけれど、その芝居で初めて、「この言葉をこのタイミングで言いたい」っていうのが成功したのを覚えてます。
美内-「呼吸」を読めた瞬間ですね。
副島-はい。それからじわじわとそういう空気を読めるようになっていって、それが作品の完成度につながっていると感じるようになりました。
美内-私、漫画を描き始めた頃、芝居の経験が全然なくてね。
副島-え!そうなんですか?初期の作品『ナオは光の中で』は演劇部の話ですよね?
美内-あれ描いたのは高校3年の時で、初めて長めのページをもらったんです。当時『アタックNo.1』が流行ってて、編集部の人にスポ根もの描きませんかって言われて予告もバレーボールものだったんです。ところが、東京行った時にお芝居観て「これ!」って思って、「バレー漫画やめて演劇漫画描きます!」宣言。
副島-編集部の人もびっくりですね。
美内-「えー!この予告は!?」みたいな感じでした。(笑)で、〆切迫ってたんで、慌てて高校の演劇部に飛び込んでなにやるか教えてもらいましたね。『ガラスの仮面』はその何年か後に描いたんです。なにをやってもだめな女の子が一つの芸事で天才性を発揮するストーリーを描きたくて。お琴をする女の子を描こうとしていたら打ち合わせで「座りっぱなしになっちゃいますよ」って。
副島-漫画にしにくいなあ。(笑)
美内-その時の編集長が「ナオは光の中で」を思い出して「演劇なんかどう?」って言ったのが始まりでしたね。その時もまだ私演劇経験なくて、でも主人公の女の子も未経験の設定だから一緒に勉強して成長しようと思いました。「演劇入門書」も買って、あと、とにかく芝居を観に行って。主人公と同じですね。パントマイムとかモダンバレーとかもストーリーにあわせて観て、そのうちに小劇場があるということも知りました。ただね、私稽古場はほとんど見たことがないんです。機会はあったんですけれど。なんか現実的なものを知ってしまうと創作の足かせになるような気がしたんです。
副島-自由な想像力ですね。
美内-その分最初の頃は大変でしたね。劇中劇とかも自分で台本書いてましたから。
副島-ストーリーの中のストーリーまで考えるって、一つの作品をつくるのにものすごいボリュームですよね。
美内-原作があるものはまだいいんです。でも、私劇中劇も最初から最後まで脚本を書くんです。使うシーンがそのうちのひとコマであっても、やっぱりバックグラウンドって大切で、だから原作があるものでも、それを舞台にしたらどうなるのかって台本を作って、舞台装置とか衣装とか演出も全部考えましたね。
副島-オリジナルも全部考えるんですか?
美内-ええ、そのために長編に使おうと思っていたアイデアストック、何本も使いましたよ。2年くらいの連載できるアイデアもたくさんあったんですけれど。で、それを全部舞台作品にするんです。実際に舞台作ってたら大変だけれど、漫画だからお金かからなくって描き放題。(笑)全部できたら、そのうちの1カットを使ってほかは全部捨てました。
副島-すごい・・・。
美内-でもその1カットには、全体があることが必要だから。描きあがるとまたたくさん芝居を観に行って。拍手のしすぎで腱鞘炎になったこともありましたよ。
副島-僕は、役者を始めてから読んだんですが、『ガラスの仮面』は教科書でした。「なるほどなるほど」って。
美内-ありがとうございます。私ね、描いていると漫画家と役者さんって似ているなって感じるんです。ほら、漫画家もその一瞬一瞬、登場人物になりきるから。月影先生の怒ってるシーンを描いているとあんな怒った表情になっていたり。登場人物に感情移入してるんですね。表現する場が舞台の上か紙の上かの違いだけで、その気持ちに集中して生まれてくる表現って、役者さんも同じだと思うんです。私が役者さんじゃなくてよかったなって思うのは、風邪をひいたときかな。漫画家は風邪をひいたら眠れますもの。(笑)
副島-役者は幕が必ずありますからね。
美内-私ね、観客の立場で言うと、舞台って声が大事だと思うんです。もちろん表情とか動きとかも見えるけれど、やっぱり一番伝わってくるのって台詞でしょ。大きな劇場で豆粒のようにしか役者が見えてなくても、声がとんできて感動したりして。だから声の演技、声の力って大切だなって。
副島-なるほど。確かに声って、ダイレクトに聴く者へ届きますからね。身体の中から湧き出る感情が声にのって観客の心に伝わっていく。役者としてはそこが演技としての見せ所でもありますね。美内 あと、やっぱりリラックスしたいですね。もちろん演出でまずリラックスさせるっていうことも含めて。
副島-たしかに役者が自信もって舞台に出ていかないといけませんね。役者が緊張していたら、お客さんも緊張しちゃったりしますから。
美内-本当にリラックスしてる役者さんっていないと思うんです。でもリラックスしているように見せる自然な空気を流してもらえると、舞台と客席が空間を共有しながら、さらに空間を育てていくことができて嬉しいですね。漫画もそうなんですけれど、舞台も一種の疑似体験じゃないですか。だからうまくのっけてくれると嬉しいなって思います。漫画の場合、感情移入できるかどうかはキャラクターに影響されるんです。話は面白いけれど、その登場人物に入り込めないとかね。
副島-感情移入してもらいやすい演じ手になるっていうのが、役者の成長かもしれないな。 今日は本当に勉強になりました。でも経験がないっていうのは本当にびっくりだったなあ。
美内-だから破天荒なことが描けるんですけれどね。(笑)
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